Wednesday, July 05, 2006

原音忠実という指向

 オーディオにおける原音忠実再現という考え方はどこからくるのだろうか。現代のオーディオ環境においては原音は存在してもそれを忠実に再現するという意義は無い。現在人々にとって耳にする音楽とは90%以上の割合で編集されたものを指す。原音はリアルなものであるが、オーディオ再生というところにおいてはリアリティが無いのである。イデオロギーに方向付けされる時代は終わった。あるのはスーパーフラットな個々の嗜好に基づいた無数の価値観のみなのである。ただ、一方にその反動として原音回帰、生音回帰とみられるムーブメントが近年みられることも確かである。

原音忠実再現を志向する人々には昔からのクラシックファンが多数を占めるようだ。

 エレクトロニクスは自然の一部なのである。エレクトロニクスの力を音楽に参加させる事とはエレクトロニクスの演奏が加わると言う事である。エレクトロニクスには彼らなりの演奏の仕方、しゃべり方が有る。原音忠実再現という楽譜のみをエレクトロニクスに演奏させるのはそのあり方としてどうなのだろうか。エレクトロニクスの力を借りてでしか音楽に触れる事ができない現在でこそ、その関係を新たに考えてゆくべきだろう。
 エレクトロニクスは鈴虫や蛍と同じように自然として今身の回りに存在し、浄瑠璃やお神楽、民謡と同じように身の回りで音を発する。現代の音楽家にとってもはや日本文化に戻ると言う事は伝統音楽に戻る事ではない。それはエキゾチシズムであり自分の文化であるという錯覚である。私はエレクトロニクスを回帰してゆく自分の文化として提唱する。

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